大判例

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東京高等裁判所 平成元年(行ケ)155号 判決

一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、二(本件発明の特許請求の範囲)及び三(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、原告主張の審決の取消事由の存否を判断するに、成立に争いない甲第二号証(本件発明の特許出願公開公報中の原明細書)によれば、本件補正前の本件発明の特許請求の範囲には「所望の(中略)図形及び文字等の表示をプリントし」と記載されていることが認められるところ、文字等をプリントするということは、特に留保がない以上、文字等の形状そのもののプリント、すなわち文字等がポジ状に表示されるプリントを意味することは当然というべきである。このことは、実施例の説明としてではあるが、原明細書の発明の詳細な説明にも「所望の図形及び文字状にプリントした後」(第二頁右上欄第二行及び第三行)、あるいは「プリントされた図形や文字部分のみが抜けたホツトスタンプ箔5が残された状態となる。」(同頁左下欄第一行及び第二行)と記載され、かつ、原図面(別紙図面一参照)にも、保形性接着剤3がポジ状にプリントされ(第1図イ)、完成品においてはホツトスタンプ箔5中に文字等がネガ状に表示されることが示されている(第2図)ことによつても、十分に裏付けられるところである。

一方、成立に争いない甲第三号証(本件補正書)によれば、本件補正後の本件発明の特許請求の範囲には「所望の文字や模様等を(中略)印刷し、上記印刷は通常白抜き文字若しくは白抜き模様のネガ版印刷とし」と記載されていることが認められ、文字等がネガ状に表示される印刷を要件とすることが明らかにされている。この点について、原告は、印刷媒体によつて文字等をネガ印刷することは本件発明の実施態様の一つにすぎないと主張するが、特許請求の範囲には「発明の構成に欠くことができない事項のみ」が記載されるのであるから、その記載の一部を必須要件ではなく実施態様にすぎないと主張することは許されない。そして、文字等をネガ状に印刷することが本件補正後の本件発明の要件であることは、前掲甲第三号証の第一頁第一九行ないし第二頁第一行に「所望の文字や模様等を白抜きした状態にインキ或は接着剤で印刷し」と記載されていることが認められるところ、右記載が実施例に係るものとしてなされているのではなく、本件発明の技術的課題(目的)を明らかにする記載としてなされていることによつても、疑いの余地がないというべきである。なお、原告は、審決がいう「ネガ」及び「ポジ」は単に注目するエリアが白抜きか否かの差であつて本質的な意義はないとも主張するが、スタンプ箔を地とし文字等を抜いた表示を得ようとする技術において、所望の文字等をまず、ポジ状に形成してから以後の工程を行う場合と、所望の文字等を逆にネガ状に形成してから以後の工程を行う場合とでは、採用すべき手段が異なることは当然であるから、原告の右主張は失当である。

そうすると、本件補正前の本件発明は所望の文字等をポジ状に印刷することを要件とするのに対し、本件補正後の本件発明は所望の文字等をネガ状に印刷することを要件とするのであるから、補正点<2>の当否について判断するまでもなく、本件補正が原明細書又は原図面の要旨を変更するものであるといわざるを得ない。

そして、本件補正が原明細書又は原図面について出願公告をなすべき旨の決定の謄本の送達前になされたことは原告の主張自体によつて明らかであるから、本件発明の特許出願は、本件補正についての手続補正書、すなわち本件補正書が提出された昭和五五年九月一六日になされたものとみなされるとした審決の認定及び判断は正当であつて、審決には原告主張の違法は存しない。

三 よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとする。

〔編注〕本件発明の特許請求の範囲は左のとおりである。

1 本件補正前の特許請求の範囲

表示盤等の生地部材表面に、所望の保形性接着剤により図形及び文字等の表示をプリントし、該生地部材表面及び接着剤面上に剥離材を有するホツトスタンプ箔をホツトスタンプし、次いで前記接着剤面にスタンプされたホツトスタンプ箔の剥離材を該接着剤と共に剥離せしめ、生地部材表面に図形及び文字等の表示が打抜かれたスタンプ箔が得られるようにした事を特徴とする表示盤等の表示方法

2 本件補正後の特許請求の範囲

表示盤等の生地部材片面に、所望の文字や模様等をインキ或は接着剤で印刷し、上記印刷は通常白抜き文字若しくは白抜き模様のネガ版印刷とし、上記印刷後ホツトスタンプ箔を該印刷面上に置いてホツトスタンプ箔を上記印刷面に熱圧着し、上記熱圧着後のホツトスタンプ箔は端末から保護材と共に上記熱圧着面から剥離し、上記剥離にて前記ホツトスタンプ箔が前記印刷部分にのみ熱圧着して残り、前記印刷部分以外に所在するホツトスタンプ箔は上記剥離側保護材にて残存して前記生地部材面から剥離できて、前記生地部材面に表示する箔表示が前記印刷部分との熱圧着で得られるようにしたことを特徴とする表示盤等の表示方法

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